サイバーエージェントが実践する「女性の長期活躍と離職率低下」


 

グループ社員数が4,000人を超える中で、 「有能な社員が長期にわたって働き続けられる」 環境作りに力を注いでいるサイバーエージェント。 全社員の女性比率は30%を超え、女性マネジメント比率は約2割となっており、産休・育休後の復帰率は96.8%と高い水準を実現。女性が長期活躍を実現している職場でもあります。そんなサイバーエージェントの人材開発本部長である膽畑さんにサイバーエージェントが実践する「女性の長期活躍・離職低下」の取り組みをお伺いしました。

社員の能力と事業を成長させる“サイバー流”人員配置の「適材適所」

-それでは、最初にサイバーエージェントが推進している「女性の『長期活躍』『離職防止』」の取り組みについて教えてください。

膽畑:弊社の代表的な女性活躍推進制度には「macalon(マカロン)パッケージ」というものがあります。今現在、サイバーエージェントのママ社員は150人。産休・育休からの復帰率は97%になります。「マカロン」は出産や育児を経ても女性社員が長く働き続けられるように制度設計しており、育児中の男性社員が利用できる制度も含め8つの制度をパッケージ化しています。そのほか、女性に特化したものではないのですが、サイバーエージェントの人事が力を入れる「適材適所」の取り組みも女性の「長期活躍」、「離職防止」に貢献しています。「適材適所」は社員一人ひとりの個性を把握し、その能力を最大限に引き出すことを目的とする取り組みで、その中では「女性」という要素も個性のひとつと捉えています。 

「適材適所」の実施にあたり、弊社では4年前にキャリアエージェントグループという社内ヘッドハンターともいえる専門チームを作りました。そこでは「GEPPO」という独自システムを使って、毎月全社員を対象としたアンケート調査を実施し、そこで集めた情報をもとにした「発見会議」というものを行っています。会議では毎日様々な切り口を用意して、顔写真入りの社員の一覧を見ながらディスカッションをしています。「この人は今何をしているのか」「最近のコンディションはどうなのか」「何をやりたいと言っていたか」など、本人のアンケート回答をもとに、1時間ひたすらチームメンバー4名で話し合うのです。 

最近だと、インターネットテレビ局「AbemaTV」の立ち上げ時に事業部から様々な「人のリクエスト」がありました。中には「将棋が好きな人」という今までにはないようなリクエストもあって、それまでに蓄積してきたスキルデータだけでは要望に応えきれないんですよね。ですから、「GEPPO」を通して趣味嗜好やキャリアプランなど様々な社員の主観情報を集め、「女性活躍」といった切り口だけでなく、「新卒」「エンジニア」「新規事業をやりたいと言っていた人」などいろいろな観点で会議の切り口を設定するようにしています。また、この取り組みが社員の「長期活躍」を促進し、結果的に「離職防止」にも繋げられるのではないかと期待しています。 

―御社が理想とする「適材適所」について、詳しく教えてください。

膽畑:一般的には「適材適所」という状態を作るために、人材を最適なポジションに異動することを考えると思いますが、我々の考えは少し違います。確かに異動も一つの手段ではありますが、弊社では社員の“才能開花”をさせたいと考えているんですね。そのため、「今いる部署で迷いなく走れるようにする」ということを、かなり重要視しているんです。具体的には、社員の成長を阻害している問題点を見つけ、障害があるのであれば、それを取り除けるようにする。また、もし組織的な課題があれば、必要に応じて組織支援を行ったり、適材適所を役員に提言するようにしています。きちんと社員一人ひとりの声に耳を傾け、一人ひとりの強みを理解し、人材が埋もれないようにすることが重要です。 

-「適材適所」を推進することで、「長期活躍」や「離職防止」にも繋がるのでしょうか。

膽畑:そうですね。「離職率」自体をKPIとして追っているわけではないのですが、2003年頃は30%程度あった離職率も様々な制度や適材適所の取り組みなどにより大幅に低下し、ここ10年程は数%を維持している状態です。キャリアエージェントのミッションステートメントには「有能な社員が長期にわたって働き続けられる環境を実現」という言葉があります。「本人のやりがい」と「組織の成果」をマッチさせることで、会社も個人も1番美しく伸びていけると考えています。だから、「長期活躍」を推進するためのマッチングが「適材適所」の取り組みであり、「長期活躍」した結果として「離職防止」にも繋がると思っています。 

働きやすさの定義は人それぞれ。時短勤務やママさん社員を一括りにせず、1人ひとりにフォーカスすることの重要性

-「適材適所」を推進する中で、どのような課題がありますか。

膽畑:「GEPPO」を運用してみて、「働きやすさ」という言葉ひとつとっても多くの定義があることがわかってきました。「働きやすさ」をオフィス環境ととらえる人もいれば、働く時間の自由度ととらえる人もいますし、バリバリ働けることと考える人もいます。一人ひとりの「働きやすさ」の定義が異なるからこそ、一括りにしてしまうのは危ないという課題がありました。 

-一人ひとりの働きやすさの定義が違うというのは、女性観点でも同様のことがいえますか。

膽畑:はい。同じ女性でも、出産や育児を機に働き方を変えたいという人もいれば、時短勤務であっても、バリバリ働いてキャリアを築きたいという人もいます。だからこそ「働くママさんたちのための制度」といった一方向からの切り口だけでは決められないんですよね。環境が似ているからといって一括りにしないというのは、とても大切なことだと思いますね。

今は女性だけではなく、全社員の「適材適所」について考えています。“女性”や“ママ”などは、たくさんの切り口の中のひとつです。今後も一人ひとりの声に耳を傾けながら、それぞれにとって最良の制度や対応を心がけていきたいですね。 

-「GEPPO」の活用で組織としての学びも多くあったと思いますが、日々どのように運用しているのか教えてください。

膽畑:「GEPPO」の運用はキャリアエージェントグループが行っています。アンケートでは現在の自分のコンディションやパフォーマンスなどの状態を天気に例え、快晴・晴れ・曇り・雨・大雨の中から選択してもらいます。その他には、希望するキャリアや趣味嗜好などを問う質問やフリーコメント欄を設置しています。

集まった情報を見られるのは弊社役員とグループメンバーの4名のみ。記入者の上司に共有することもありません。クローズドだからこそ、回答のハードルが低くなるんですよね。ちなみに、アンケート回収率は96%で、フリーコメントにも毎月500~1,000ほどの回答があります。月初の3営業日目に4人で3時間ほどかけて全てコメントを読み込み、返信が必要なもの、面談が必要な人など、それぞれへの対応を決定しています。 

-御社の規模では、選択肢の中から回答を選んでもらった方が運用負荷が軽減されると思うのですが、フリーコメント欄を設置したことには何か意図があるのでしょうか。

膽畑:もちろん、チェックボックスにした方が集計は楽ですよね。以前、他社の組織設計の研究をした際にも、多くの会社で行っていたのが本人のアセスメント、つまり能力を数値化したものを分析し、科学的評価をもとに最適にマッチングするというやり方でした。しかし、我々は限られた選択肢から選ばれた回答ではなく、自由に書かれた言葉でなければ、本当の気持ちが伝わってこないと考えているんです。我々は客観的データをレピテーション、主観的データをセルフインフォメーションと呼んでいて、主にセルフインフォメーションをベースに、これまでデータベースを構築しています。だから、どんなに読み込みに時間がかかったとしても、自由に書いてもらったフリーコメントを大切にして「適材適所」に活用していこうという意思決定をしています。 

-客観的データであるレピテーションよりも、主観的データのセルフインフォメーションを重視することを決定した背景について教えてください。

膽畑:それは、本人の意思や、やりたいという気持ちがパフォーマンス向上につながるという考えからです。もちろん、全員のやりたいことを100%叶えられるかどうかは別問題ですが、まずは本人の気持ちがベースにあることを重要視しています。

事業部から来る人材ニーズも「こういう能力やスキルを持っている人はいませんか」ではなく、「こういうことをやりたい人はいないですか」という聞かれ方をします。即戦力でなくても、やる気さえあれば3カ月で形になるから、現時点での経験やスキルは問わないというのがその真意になります。 

-少し角度を変えた質問です。アンケートにはネガティブな回答もあると思います。対応を誤ると逆に社員のモチベーション低下に繋がる危険もあると思いますが、その点についてはどのような対策をしていますか。

膽畑:弊社には大前提として「21世紀を代表する会社を創る」というビジョンがあるので、ネガティブな意見については「個人に寄り添いはするが、個人のわがままを聞くわけではない」という考えで対応方法を決定しています。もちろん、例えネガティブな意見やクレームであっても社員の想いには寄り添ってあげたいという気持ちはあります。しかし、それが組織にとって本当に必要な主張なのか、ただの個人のわがままなのかを切り分けて判断する必要があると思っています。個人のわがままに対しては、「それは違う」と、しっかり答えていくことで、個人だけでなく、組織も成長していけるのではないかと考えています。 

-「長期活躍」「離職防止」を成功させるためには、産休・育休からの復帰についても考えていく必要があると思います。社員の復帰について、御社の取り組みを教えてください。

膽畑:産休・育休中の社員に行っていることは、職場を離れている間の不安を解消できるように「ママ報」という社内報を自宅に届ける取り組みです。「ママ報」には直近の会社の動きや、社内の様子など、会社についての情報を盛り込み、休んでいる間にも情報共有ができるようにしています。また、復帰後の働き方をイメージしやすいように、先輩ママ社員の経験談などの取材をして、それも「ママ報」に掲載しています。

そして、復帰前には必ず面談の機会を設けています。本人の復帰後の働き方に対する希望と、事業側のニーズを踏まえ、最適な「適材適所」を見つけるということに、かなり力をいれていますね。 

働きやすさの再定義 -それぞれの強みが活かせる組織へ

-今回、「女性の『長期活躍』『離職防止』」というテーマでお話を伺って、「適材適所」というキーワードが何度も登場しました。御社ではその他にも様々な取り組みをされていると思いますが、今後の取り組みについて教えてください。

膽畑: 我々は「21世紀を代表する会社を創る」というビジョンに基づき、社員の能力発揮や、それぞれの強みを生かした組織貢献、チームでしか成しえない成果の最大化を追及しています。ビジョン実現のために、社員一人ひとりの強みを理解し、それを埋もれさせないための取り組みや、現状の役割の妥当性を見極めるための定義作りなど、今後も様々な取り組みを進めていきたいと考えています。

 

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