AI時代は「キラークエスチョン」で人材を見極めることが採用のカギに(前編)


 

経営チーム開発コンサルタント、経営人材の目利き、リーダー育成のプロであり、経営者やファンド等の株主から「経営×人」領域のディスカッション・パートナーとして絶大な評価を受けている株式会社プロノバの代表取締役、岡島悦子さんをスピーカーに迎えました。現代の人材市場や人事事情を紐解き、優秀な人材を見極めるための戦術や手法をお話いただいたたHR Knowledge CAMP第二部の前編です。

【イベント実施日】
2018年7月3日(火)

【スピーカー】
株式会社プロノバ 代表取締役 岡島悦子氏

【モデレーター】 
株式会社LiB 代表取締役社長 松本洋介氏

労働市場の二極化時代が到来 ワクワク”させる人材の獲得競争が激化する

松本洋介(以下、松本):第1回HR Knowledge CAMP第二部は、年間200名を超える経営者のコンサルティングを行っている株式会社プロノバ代表取締役岡島悦子さんにお越しいただきました。岡島さんにはLiBのアドバイザーも務めていただいております。よろしくお願いします。

岡島悦子氏(以下、岡島氏):よろしくお願いします。ベンチャー業界のゴットマザーのような仕事を15年ぐらいやっています。今日お越しいただいているみなさんは、人事担当者の方が多いと思いますが、普段は経営者の方とご一緒させていただくことがほとんどで、人材の採用や育成などについてお話しています。最近は、数万人規模の企業も含めてサクセッション・プランニングと言われるような仕事をしています。具体的には、10年から15年ぐらい先の未来の社長候補を抜擢して、200人ぐらいの母集団を作り、その方々を適所に配置するような仕事です。 ということで、朝から晩までさまざまなイケメン社長たちと仕事をしています(笑)

松本:第一部では、ユーザーエクスペリエンスを、プロダクトと組織、人の掛け合わせでどう作るかというようなテーマで、SmartHR宮田社長、メドレー加藤さん、メルカリ石黒さんのお三方からお話しいただきました。

岡島氏:はい。今日の私のパート、『AI/オーナス時代の人材活用戦略』というちょっと大仰なタイトルになっていますが。私は今、労働市場の最適配分みたいなことをすごくやりたいと思っているんですよね。

松本:最適配分ですか?

岡島氏:人事にいらっしゃる皆さんは、人材の採用、育成、配置、代謝みたいなことを考えていらっしゃると思うんですけれども、おそらくこのオーナス期というところでいうと、いろんな仮説があって、労働市場の人口は減っていくと言われていますよね。

松本:はい。

岡島氏:一方で、人生100年になっていくので、ここにいらっしゃるほとんどのみなさんがおそらく80歳ぐらいまで働くということになり、労働寿命が60年ぐらいに伸びていく。プラスマイナスがあるわけです。

松本:時間軸はプラスですもんね。

岡島氏:ですから、働き方改革の基本は、「長時間」労働から「長期間」労働へ、となるんですよね。2015年に行われた野村総研の調査によると、10~20年後、49%ぐらいの仕事はAIに取って代わられるそうです。AIに任される仕事の内訳としては、統計解析や記憶のような、人間が不得意としていて、機械の方が得意なこと。また、みなさんの会社にもある、例えばマニュアル通りに行う単純作業のような仕事も補完的にAIがやってくれるようになります。

松本:なるほど。

岡島氏:だからオペレーションと呼ばれている業務の中でも、マニュアル化されているものに関しては、その分の労働力はいらなくなります。と、この仮説を踏まえた結果、何が導き出されるのかというと、完全な労働市場の二極化です。もうちょっと言うと、モテモテな人と、モテない人の差異がさらに開く、ということです。

松本:そうなりますね。

岡島氏:2025年ぐらいになったら、獲得競争される人とAIによって代替可能になってしまう人とに二極化され、格差が生まれる。そして、ここにいらっしゃるみなさんはモテモテな人を採り合うと。そういう構図になってくるわけですよね。

松本:今も若干、その片鱗がありますよね。

岡島氏:そこで何を考えなくてはいけないか、というのが大きな問いなのですが、それは「人間にできて、AIができないことは何なのか」ということです。私はAIの専門家の先生たちと、このような話をしょっちゅうしているんです。そこで、今のところの私たちのそれに対する仮説は“ワクワクすること”。

松本:ほうほう。自分自身がですか?

岡島氏:そう。あるいは、“ワクワクさせること”。

松本:人の心を動かすということですね。

岡島氏:機械には“共感”のようなキーワードはないですが、何に対して共感するのかっていうことをアルゴリズムに入れれば、できるようにはなるわけですよね。 例えば、結婚式の演出について、ブライダルプランナーさんによって「こういうのにみんなワクワクするよね」というような方程式ができれば、AIはそれを機械学習して、パターン分けして作ったりすることもできる。だけど、「どの写真を見せると、実家のお母さんが抑えきれずに泣いてしまうか」ということを探すのはAIにはできないんですよね。

松本:そうですよね。

岡島氏:こういう、コミュニケーションができる人材、もっといえば、デザイン人材と言ってもいいのかもしれませんけれども、ここが同業者間で採りあいになるだろうと思っています。 きっとみなさんの会社でもBTC人材、つまりビジネス・テクノロジー・クリエイティブの合わせ技ができる人の必要性についてお話されているかもしれませんが、こういった人材を育成するのか、それとも採用するのか、みたいな点にも関心が集まってきています。

“ツギハギだらけの温泉旅館”ではダメ 「独自の人事戦略を立てること」で人事の価値を高める

松本:今回、岡島さんにこの2つ、お聞きしてみたいことがあります。会場には人事ご担当の方がたくさんお見えなんですけれど、今後「人事の仕事」の価値をどう高めていくべきなのかっていうのが1つ。2つめは、採用について。機械にはできない、優秀なモテモテの人材を集めるにあたって、差のつけ方・磨きどころはどこなのかということです。 まずは一つめ。人事の仕事についてですが、今後、AIに取って代わってしまうものなのか、それとも価値をつけていくべきなのか。岡島さんはどのようにお考えですか?

岡島氏:「人事戦略を立てる」ことに関しては、今後、人事の仕事の中でも重要なテーマ・中心的な役割になっていくと予測しています。先ほど登壇された、メルカリの例でいうと、社長の小泉さんが組織の設計をして、こういう人を集めていって、と、早め早めに戦略を仕掛けておくということをやっているわけです。そういうことを考える人は、社長ではなくCHRO(最高人事責任者)の場合もあると思うんですが、これは重要な役割の一つになりますよね。

そして、結局、人材獲得競争になるので、採用をはじめ、リテンション、エンゲージメントも視野に入れて「いかに人をワクワクさせるか」について考える仕事は、ものすごく重要な役割になると思います。一方で、制度設計などに関しては、もっとアウトソースされ、もっと分化されていくと思うんですよね。 そして、第一部のお話の中で「メルカリさん、どんな制度やっていますか」とか「ビジョンの浸透はどうやっていますか」みたいな内容があったと思うんですけれども、そういうことを聞いてもダメなんですよね。

松本;ほほー。なるほど。

岡島氏:いい企業の、その制度だけを輸入するのでは、同じようには実現できないんです。もともとの人事哲学みたいなものが重要で、制度はそれに対する処方箋なので、「あ、ちょっと頭痛いな」と思ったらすぐアスピリン飲んじゃうみたいな、そういうのはやめたほうがよくて。「本当はどこが悪いんだっけ」ということを考えないと、“ツギハギだらけの温泉旅館”みたいな状態になります。別館・新館、どれが新しいんだっけ?とか、どれがどこにつながっているんだっけ? みたいな感じで、全体像が分からなくなっちゃうので。一方、制度の実行や運用については、相当、機械でできることも増えていくと思います。

松本:なるほど。

岡島氏:人が関わらなければならないところは、人事戦略だったり、OKR(目標管理)の決定だったり、評価フィードバックや、あるいは理念浸透のような、文化づくりみたいな話ですよね。その点については、人事の役割はすごく重要になっていくという感じだと思います。

松本:おっしゃるとおりです。ここ数年、人事って言葉が含む、業務領域とか経営からの期待って、相当広がりましたし、以前とは別物になりましたよね。

岡島氏:今日来ていただいているのがベンチャー、スタートアップ企業の方が多かったりすると、もしかしたら現在の人事の仕事は採用中心だったり、あるいは、少し大きめの企業だと、採用と育成が人事部の中で分かれたご担当になっていらっしゃるかもしれないんですが、その辺も今後変わっていくんじゃないかなと思いますね。

CHROに駆け上がっていくためのタグは「人の心を動かす」「経営者目線

松本:ちょっとお聞きしたいんですが、たくさんの経営者や戦略人事の方と接点のある岡島さんから見て「人事」「戦略人事」「CHRO」になる人の差、分け方って岡島さん的にはどんな感じなんでしょう?

岡島氏:人事畑で、何回も転職しているっていう人は「人事屋さん」という感じですよね。

松本:なるほど、人事屋さん。

岡島氏:「評価制度を作ってます」みたいな感じですかね。 私はよくベンチャーの経営者に「社内にCHROに適したいい人事がいない」というような相談を受けるんですが、そういう時には「営業のエースを抜擢したほうがいい」とアドバイスをします。

もちろんビジネスドメインにもよるので、例えば、エンジニアをすごく採らなきゃいけない企業であれば、営業出身者で採用ができるのかという指摘はもちろんありますけれども、 営業の仕事は今日の「コミュニケーション人材」という話にも関係があると思います。

徹底的に相手をプロファイリングして、どんな戦略で、どこで心のスイッチを入れていくかっていうコンピテンシーは、営業と人事や広報も、すごくよく似ていますよね。だから、採用業務においても、そのプロファイリングをどこまでやれるか、どこまで心を動かしにいけるかってことに尽きますよね。

松本:なるほど。営業的なターゲットを決めて、心を動かしに行くっていうタグがあると。人事からCHROに駆け上がっていくタグって、他にありますか?

岡島氏:事業ドメインについて理解しているかどうかですね。自分たちの会社の比較優位性はどこにあって、逃したらいけないポイントはどこなのか。経営者目線で考えられるかどうか、ということだと思います。それができるために必要なこととして、「知識」「経験」「能力」の部分がありますが、「能力」、つまり地頭があればポテンシャルはあるのではないかと思いますけどね。

実績だけを見ない「キラークエスチョン」で本当に必要な人材をあぶり出す

松本:なるほど。もう一つ。先ほどの質問の後者のほうなんですけれども、二極化した時に上の方の人は取り合い合戦になるじゃないですか。引き寄せ、集め、採るという採用力を上げるために必要な“磨き方”ってどんなことなんでしょう?

岡島氏:これは、人の見方を変えたほうがいいでしょうね。私はマッキンゼーというコンサルティング会社にいたんですけれど、みなさん、ある意味ではコンサルタント風に毒されすぎていてですね。例えば、人の採用をする時に「地頭採用」とかって言っていますよね。「論理的に思考できることが重要」とすごく思っている。あと、一番やってはいけないことで言うと、採用面接の時に「どんな実績がありますか?」みたいなことを聞いているわけじゃないですか。

でも、今後みなさんが採用しなければいけないのは、「これからどんな実績を出せそうか」という人であって、「これまでどんな実績を出してきたか」は、いらない筋肉かもしれないわけですよ。

松本:なるほど。

岡島氏:私、ビジネススクールで教授をやっていたりするので、あんまり言えないんですけれど……ビジネススクールを出たからいいってわけではないんです。「経営の秘伝のタレ」的な知識はすでに相当、マッキンゼーやハーバード大学が世の中に出しているわけです。なので、ググれば全部出てきます。この中で3C分析知らないっていう人、いないですよね。だとすると、「それをどう使えるか」ということが大切であって。もうちょっと言うと、先ほどの「共感力」とか「ワクワクさせる力」ということと、地頭は、似て非なるものかもしれないですよね。

松本:どういうことですか?

岡島氏:つまり「なんかあの人ゆるふわで話すのはうまくないけど、めっちゃ人を共感させる力はあるよね」で、場合によってはOKかもしれないわけです。なぜかというと、「地頭が良い」というところに関しては、スーパーコンピューターがやってくれる領域かもしれないわけです。

松本:そうですよね。

岡島氏:もちろん、どんな人材を採りたいか、という候補者のパラメーターを入れることはここにいるみなさんがやらなきゃいけないことなのですが、それができれば良いわけですよね。

コミュニケーション人材の領域、例えば、サービス業、ITサービス業でどういう人を採ればいいかとなった時に、「仮説が100個出せる、時頭の良い人」ではなくて「お客様の気持ちが分かる人」だとしたら、そういった人材を採用するための「キラークエスチョンは何か?」という話ですよね。

キラークエスチョンは、それぞれの会社にあると思います。 先ほどのブライダルの例でいうと、例えば「子どもの頃から、幹事気質だった人のは誰?」みたいな質問です。つまり、「色々なパーティや誕生日会の幹事をやっています」、「周りのみんなが喜んでいます」、みたいな人がいいんですよ。

松本:なるほどなるほど。

岡島氏:どこのスイッチを押すとお客様は喜ぶのか。

松本:ってことが、しみ込んでいるっていうことですよね。

岡島氏:ここの会場にいらっしゃる、人事のみなさまからの非常に重要な問いは「うちの会社にとってのキラークエスチョンは何なのか」、「どういう質問をすると、うちが本当に採りたいと思っているポテンシャルの人が採れるのか」ということです。

ポテンシャル人材を探し当てたら、次に必要なのは「活躍できる環境」

松本:これ、本当に深いですね。

岡島氏:そこで、皆さんの目利き力が問われるのは、「今がMAX」な人材では最悪なわけですよ。もっというと、「中学は超有名進学校でした、そこが私の人生のピークでした」というパターンが最悪なわけですよ。それよりは、もしかしたら昔はちょっと不良だったかもしれないけれど、今、がんばってやっています、というような「化ける人」をどう探せるかが勝負です。

今ここにいる方々に、10年後にまたこの会場に戻ってきていただいたとすると、みなさんが同じ会社で人事をやっていらっしゃったとしても、同じビジネスドメインとは限らないわけです。そう考えたら、ここにいらっしゃるみなさんが何をやらなければならないかというと、ここから伸びそうな人を、いかにうまく吸着して、そしていかにリテインし、維持していくかっていうことですよね。その人たちが最も活躍できる環境をどう作るか、ということ。

松本:もういい話過ぎて、刺さりすぎて、やばいです! でも、本当にそうですよね。経営とシンクロして、事業構造を理解して、うちのこのビジネスにおける秘伝のタレをあぶり出すクエスチョンは何なのかっていうことを話せる抽象度がこれからの採用には必要ってことですよね。

岡島氏:キラークエスチョンは、固有であればあるほどいいんですよ。例えば、「子どもの頃、秘密基地を作っていたやつは誰だ?」とか、「ゼロから遊びが作れた人は誰だ?」、みたいなことがすごく重要な会社もあるだろうし、それぞれの会社に固有のクエスチョンがあると思います。

松本:なるほどなるほど。 そう思うと人事の仕事って相当面白いですよね。

岡島氏:めちゃめちゃクリエイティビティが必要だと思いますよ。

松本:先ほどのブライダルの話がすごくイメージしやすいんですけれど、例えば、某大手レストランウエディング事業会社だったら、ホテルのように決まったものをぱぱっとやるのではなくて「オリジナルで人を喜ばせる」ってことが彼らの強みだったわけですよね。そんな会社が採りたいのは、幹事気質だっていうの、すっごく分かるじゃないですか。

岡島氏:そうなんですよ。私、その会社さんとも長くお付き合いさせていただいているんですが、そこのスタッフの方は、頼まれてもいないのに、お客様のご自宅についていって、押し入れから全部写真を出して並べて、どれが一番いいか、みたいなことまでやってしまう。そんな気質の人がのちにスーパープロデューサーになったりするわけです。

松本:すごくイメージ湧きますね。 でもその会社も、連続でいろんな事業をやっていく中で、採りたい人も変わっていくってことですよね。

岡島氏:そうです、そうです。

松本:必要なライトパーソンが変わってくる――面白いですよね。 経営のフェーズ、ステージ、自社のビジネスドメイン含めて、どんな気質をあぶり出すのが、見極め方なのか、それは、言い換えると、過去の実績では本当になくて、伸びしろを、ポテンシャルを探し当てるっていうことですもんね。

岡島氏:もちろん、上場がもう見えていますとか、この時にIPO準備しなければなりません、みたいなフェーズで、人を採用する場合にはまた違うと思うんですよ。今、私がお話しているのは、どちらかというと、「これからを共に創る人たち」っていうことですね。

 

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