AI時代は「キラークエスチョン」で人材を見極めることが採用のカギに(後編)


 

経営チーム開発コンサルタント、経営人材の目利き、リーダー育成のプロであり、経営者やファンド等の株主から「経営×人」領域のディスカッション・パートナーとして絶大な評価を受けている株式会社プロノバの代表取締役、岡島悦子さんをスピーカーに迎えました。現代の人材市場や人事事情を紐解き、優秀な人材を見極めるための戦術や手法をお話いただいたたHR Knowledge CAMP第二部の後編です。

【イベント実施日】
2018年7月3日(火)

【スピーカー】
株式会社プロノバ 代表取締役 岡島悦子氏

【モデレーター】 
株式会社LiB 代表取締役社長 松本洋介氏

優秀人材に出会ったら「いつか一緒に働きたいよね」と心に付箋を

松本:続いてお聞きしたいのですが、今後、人材採用競争が激化していくと、人数が減り、その内訳は「ピカピカ」な人と「コモディティ」化した人みたいな感じに分かれていく。と、なった時に、労働マーケットの中で、いかに優秀なピカピカ人材に選ばれるかっていうことが必要になってくると思うんですが、そこの優位性や差のつけ方について、どのようにお考えですか?

岡島氏:言葉を選ばずに言えば、答えは一つです。とにかく成長がすべてを癒します。

松本:伸びている会社に集まる……。

岡島氏:今、メルカリはその成長フェーズにいますが、でも10年後もそうであるかは、まだちょっとわからないですよね。

成長していると何がいいかというと、「活躍の場」がどんどんできる、ということです。残念ながら、昨日のワールドカップで日本は負けてしまいましたが、サッカーでもそれは同じ。 私、香川真司さんや本田圭佑さんと仲がいいんですが、よく彼らと「どうやって若手を作っていくか」という話をしているんですが、やっぱり若手が試合に出られなければ意味がないんですよね。試合に出ると、試合勘ができてきて、今回の乾選手のように点数を入れる、みたいになるわけで。みなさんの会社にどれだけ、代表戦のような、試合の機会があるのかということに限りなく関係していると思います。

松本:オポチュニィティをどこまで広げられるかっていう……。

岡島氏:そうそう。そうでないと、優秀な人材はもっと急成長の確度が高いところに引き抜かれますよね。「自己成長の機会がないから」という理由で。

松本:おっしゃるとおりですというのを前提にして、一つ難しい質問をしたいのですが。みんながみんな、メルカリのようにはなれないじゃないですか。そんな状況下でも優秀な人は採らなければならないという中で、「メルカリになる以外」の磨きどころってどんなところでしょう?

岡島氏:やっぱり「レッドオーシャンでは厳しい」という話だと思います。メルカリと攻め合って、人を採ろうなんて話はやめたほうがいいです。「もうちょっとステージが若い方がいい」という人以外は、そりゃあ向こうに行きますよ。ここにいるみなさんが採らなければ」いけないのは、潜在層ですよね。顕在層じゃなくて。 顕在層っていうのは「もう転職したくてしょうがないです」という人。いろんなエージェントに登録済みのような。

松本:もうマーケットに出ちゃっているっていう。

岡島氏:それに対して、潜在層というのは、LiBに登録に来ている方々もそうかもしれないですが、「転職したいかどうかはわからないけれど、先々もっと成長したいと思っている」もしくは「今、めちゃくちゃ活躍しているけれど、先々のこともオポチュニティとして考えておきたいです」という人たち。だから、もう、どこかの企業と採り合うような人ではダメで……今日、無料イベントなんでしたっけ?

松本:はい、無料です。

岡島氏:じゃあ、あんまり、いいことは言ってはいけない?(笑)

松本:いや、どうぞ。お願いします!出し切ってください。みなさんお忙しい時間をかけてきてくださっているので。

岡島氏:私がこの16年間、毎年200人、何百人、何千人という経営者に会ってきて、最も喜ばれているアドバイスがあるんですけど、聞きたいですか?

松本:聞きたいですよね。

岡島氏:これ最近、色々なところで言い始めているから、もしかしたらどこかのメディアに出ているかもしれないんですけれど、あるキラーフレーズがあって。 それは、とにかく、「一緒に働きたいな」という人を見つけたら、いつでも、どこでも「いつか●●さんと一緒に働きたいよね」と言う、ということです。

松本:言い続けると。

岡島氏:言い続けるんです。これがすごく大事です。例えば、みなさんの会社で、内定を出したけど他社に取られちゃったとか、「今の会社にとどまります」と言われちゃった人に対して、「いつか一緒に働きたいね」と言っておく。または、こういうセミナーやカンファレンスとかで出会った人とか、そういうことも含めてなんですけどね。 私自身が知っている限りでは、そういう一言がきっかけで、大物の人たちが動いています。

松本:そうですよね、実際そうですよね。

岡島氏:このアドバイスは、どの経営者もすごくよかったと言ってくれています。 なぜかというと、転職って、会社基点ではなく自分基点で動くものなんですよ。だから、声をかけた時に、「たまたまタイミング合いませんでした」というケースがすごく多くて。 だけど、例えば「うちの会社が買われちゃった」とか「自分がずっと一緒に働いていたいと思っていた上司が辞めちゃった」とか、そういうタイミングがあるわけです。そこで、その人が「ちょっと考えようかな」と思った時に、みなさんの顔が想起されるかどうかっていうのが勝負どころですよね。

松本:いや、もうおっしゃるとおりですね。

岡島氏:「今もしかしたら採っていないかもしれないけど、昔、●●さんからこう言われたから、仕事の可能性について聞いてみようかな」となる。松本さんは人材市場のお仕事をやられているので、そういうご相談も多いでしょうけど、そういう声がけがあると「だったらうちでやりなよ」ってなるわけですよ。

SHOWROOMの前田さんだって、NYから戻ってきて、DeNAの南場さんのところに「起業しようと思うんですけれど、ビジネスプラン見てください」って相談しに行ったら「経営やったことないでしょ?うちでやってから、やったら?」って言われたっていうエピソードもあります。口説き文句ですよね。

松本:でも南場さん、ずっと言っていたんですよね。いつかおいでって。いつかっていう風に。

岡島氏:なので、これからは人の心に付箋を貼っておくのが大切です。例えば、誰かの心にLiBの付箋が貼られていればいいわけで。

メルカリが強いのは【勢い×心の付箋貼り】をやり切っているから

松本:いやあ、でもこれが。うちも含めてなかなか徹底できないんですよね。

岡島氏:誰に対しても言うんじゃ、ダメなんですよ。

松本:はい。

岡島氏:「俺も言われた」ってみんなが言っていたら、価値がないですから(笑)!でもこれぞっていう人には、「一緒に働きたいですね」って言っておくことがすごく大事です。自分たちの会社を辞める人にもそうかもしれないですね。マッキンゼーも出戻りが多いですが、最近、セプテーニも多いと聞きました。辞めていく優秀な人には、「またいつか一緒に働こうね」って言っておくのは、とても重要です。

松本:メルカリって無双じゃないですか。で、確かに先ほどおっしゃった、勢いがある側面もあるじゃないですか。僕、メルカリがすごいなって思うのは、社員のリファレンスがすごく多いんですよ。社員一人ひとりが、いつか一緒に働きたい人に付箋貼りまくっているんですよ。ランチ誘ったりして。

岡島氏:何かいろんな人たちがそうやって声をかけられていて。

松本:全社員が「いつか自分が働きたいっていう人」という主体性で、ごはんとか誘ったり。制度があって、常に付箋貼り続けているから、リファレンスも強い。ちょっと立ち止まった時に「そういえばメルカリのあいつに言われたな」って思い出して。集まってくるという。【勢い×付箋貼り】という2つをやり切っているから、無双なんだなって心から思ったんです。

岡島氏:みなさんの会社でもそうだと思いますよ。これからはやはり、人としての相性もすごく関係があるから、「この人に言われたら想起する」ってなりますもんね。

お客様に良い「問い」を立てられるコミュニケーション人材の存在が肝に

松本:最後の質問です。先ほどの第一部で「プロダクトドリブン」だけのビジネスモデルって実はそうそうないんじゃないかと。玄人経営者やCHROたちは、そこにオペレーションや人のコミュニケーションみたいなものを織り交ぜて、結果、やめられない、使いやすいというような「ハマるサービス」を作り上げていく。全体のエクスペリエンスを人と技術で作っていくことによって、理想のカスタマージャーニーを実現するというような感じですね。

これは非常に強いなと思っているんですが、岡島さんは、今後のエクスペリエンスの作り方・人の役割についてどのように定義できると思っていらっしゃいますか?

岡島氏:リーダーシップの世界で確実に言われているのは、コレクティブ・ジーニアス(集合天才)、つまり、一人で全部やる必要はないということです。例えば、カスタマージャーニーを創る、という話でも、エンジニアの人とCS(カスタマーサービス)やプロダクトマーケティングの人たちが一緒に創っていく。「三人寄れば文殊の知恵」的に一緒に創っていく、ということが1つ。

それと顧客インサイト、マーケットインサイト、といったものも少し古くなってきています。「お客様の中に解がある」という考え方から、これからは「お客様と共に解を創る」という方向に変えていかなくてはいけません。おそらく、アジャイルにこちらから色々なサービスをお客様に当てていって、先ほどの「共感」という話にも非常に近いと思いますけれど、お客様にもっと良い「問い」を立てられるか、ということがすごく重要になってくるので、そういうコミュニケーション能力が肝になってきますね。

松本:なるほど。ありがとうございます。

【質疑応答①】 社員数13名の企業で「キラークエスチョン」を作るには?

松本:それでは一旦、トークセッションはここまでにさせていただきまして、Q&Aに入りたいと思います。岡島さんにぜひ聞いてみたいということがある方、挙手をお願いします。

質問者①:先ほど「あなたの会社のキラークエスチョンは何か」という話があったと思うんですけど、その考え方とどうやってキラークエスチョンを導いていくのかをお聞きしたいです。弊社は社員13人ぐらいのスタートアップです。

岡島氏:13人でしたら、今いる13人と違うタイプの人を採ると思うので、全員に聞いて、共通項を出してもちょっと難しいかなと思います。N数が足りないんですよね。 そうすると「創業者が原体験として持っていることで、こだわっていることは何か」ということを探っていくのがいいと思います。例えば、創業者が子どもの頃に何に夢中になっていたか、とか。そして、それに共感しそうな人を探していくのがよいかと思います。

松本:すごく具体的ですね。ありがとうございます。

【質疑応答②】ビジネスサイドとエンジニアサイドをうまく融合させた風土づくりの秘訣とは?

質問者②:社員20名ほどの、プロダクトを持っている会社です。エンジニアが働きやすい環境を作りたいと思っているんですが、その組織作りの難しさに直面しています。前提としてエンジニアは、ビジネスサイドに比べてコミュニケーションの取り方が違ったり、志向性が違う方が多い。エンジニアに特化した風土づくりをしていくのか。そこをやめてフラットな組織にしていくべきか。バランスのとり方みたいなところに悩んでいます。

岡島氏:色々な会社さんでお手伝いしていますが、見ていると、リードエンジニアとプロダクトマネージャーを分けている企業は多いですよね。某大手IT企業のリードエンジニアの方のように、あまりラインを持たずに動いて、「この人化け物のように頭がいいよね」っていう人がよかったりするわけですよ。

質問者②:ちなみに私も元某大手IT企業出身です。

岡島氏:じゃあ、よくわかっていらっしゃいますよね。ああいう感じの人が部隊を引っ張っていけるかというと、そうではないと思うんですよ。むしろ違う人で、もう少し親分肌っぽいエンジニア、プロダクトマネージャーがいたほうがいいと思います。なので、多くの企業で私がアドバイスしているのは、ピンで行くプロフェッショナル職と、ラインを持つようなエンジニアとを分けて、評価制度も変えていく、組織設計上も変えていく、ということです。前者のプロフェッショナル職の方は、一般的にチームワークが苦手だという人が多い。文化という意味では、お互いを理解し合う受容性は必要ですが、それがないと上に行けない、というのはまた違う話だと思うので、ごり押ししない程度の風土づくりを目指すのがいいかと。制度の運用で解決できるかなと思います。

一方で「ビジネスサイドとエンジニアサイド、どっちが上か」ということがよく起こると思います。そこは、士農工商みたいな身分制度にならない風土づくりを相当やらないといけないと思います。

なので、どの会社でも、横串のプロジェクトの実施はかなり以前からアドバイスしていることですが、「縦横をみながらの設計」そして「風土づくり」の合わせ技が重要ですね。

松本:すごいですよね。何を聞いても的確な回答をされるのが本当にすごいなと思って。

岡島氏:まさか元某大手IT企業の人だとは思わなかったです(笑)。

【質疑応答③】 人材を採用し急成長する上で、社員に理解・納得してもらうには?

松本:では次の方、お願いします。

質問者③:岡島先生に聞くのが緊張しちゃって、躊躇していました(笑)。

これまで創業者が質重視の盤石な経営をしていたんですが、この度社長が変わり、事業拡大の方に進んでいくことになりました。それで、一気に人材を集めようということになってきているんですが、医療専門職が中心の会社で、看護師をどうやって採用しようかというのが悩みです。その一方で現場サイドは「そんなに人を採用してどうするんだ?」「質、保てるのか?」「育成にどうやって時間を割くのか?」というような反発の嵐で、一緒にやっていこうという気がまったくないんです。

企業が成長していくことがすごく望ましいということは分かりますし、ワクワクするような、といった視点で現場をどう口説いていったらいいのか、なにかいい方法があったら教えてください。

岡島氏:メディカル系ということ以外、どういうビジネスモデルなのかが分からないので、何とも言えないのですが、一つ考えなければならないのは「労働集約的なビジネス」なのかということです。社員数の増加に伴って成長ができるというモデルなのか、プロフェッショナル人材がたくさんいて、プランニングはやるけれど、エグゼキューションは他に任せる、といった感じなのか、ということとすごく関係があると思います。

今、看護師さんというお話も出たので、おそらく前者、割と労働集約的なんじゃないかという仮説で話しますが。「看護師さんたちが何にこだわっているのか」というところを洗い出さなければならないかと。「量を取ろうよ」っていっているときに、そこで必要だと言われている質は、おそらく看護師としての技術ではなくて、「患者さんのことを考えられるかどうか」みたいなことなのかもしれません。なので、そこをしっかり洗い出して、「そういう人を採用していきますよ」という方向性についての理解、納得をしてもらう。実はこの「納得」っていうフェーズがものすごく大事です。そこをしっかり押さえないと「人がどんどん入ってきて、全然技術もなくて使えなくて、教えたんだけど出ていっちゃうんだよね」っていう状態になりかねません。なので、私だったら、今いらっしゃる方たちへの納得度を高めるフェーズを1回やりますかね。

あともう一つ、「人数がいると何ができるようになるのか」ということの納得感もやはり必要です。世の中に対するインパクトなのか、経営環境として、今、競合と取った取られたのところだから時間軸が大事なのか、という戦略上の話もあると思うので、その2つの合わせ技かなと思います。

松本:はい、ではお時間となりましたので、岡島さんとのセッションはこちらで終了となります。ありがとうございました。


 

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