ユニリーバが実践する『多様性のある働き方』


 

400を超えるブランドを保有し、世界190カ国で事業展開している世界最大級の一般消費財メーカーであるユニリーバ。同社には、国籍、文化、性別など多様な人材が集まっています。 そんなユニリーバの日本法人であるユリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社の取締役、人事総務本部長である島田由香さんにユニリーバが実践する「多様性のある働き方」の取り組みをお伺いしました。

成果が出せる状態は自分が1番知っている

-「多様性のある働き方」を推進するため、どんな取り組みをしていますか?

島田: ユニリーバはいろんなことをやれる場所ですし、やってきている会社だと思っていますが、特に昨年7月よりスタートしました『新しい働き方(New Ways of Working)』では2つのことを取り組みの柱にしています。1つは「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」、もうひとつは「月間残業時間目標45時間」です。

「月間残業時間目標45時間」については、私自身が残業がいけないとは思ってはおらず、ただ意味なく残るとか、やらされ感でだらだら長時間やることには大反対なんです。45時間と置いたのは、目標を設定することで意識を持ち、行動に変化を与えるためです。

そして「WAA」は「どこでも(Anywhere)いつでも(Anytime)働ける」という働く場所と時間の選択肢を広げた制度です。私たち一人ひとり、自分が一番成果を出せる状態は、自分が一番知っています。結果さえ出せば、場所や時間、ペースも好きで構いません。だから、「一番あなたの能力を発揮できる方法で仕事をしてください」というのが「WAA」の仕組みです。

制度だけでは成り立たない。制度とマインドセットの両輪で進めていく重要性

―なぜ「WAA」に取り組もうと考えたのでしょうか?

島田:私自身以前から「何で9時に出社しないといけないのか」「どうしてオフィスに行かないといけないのか」「結果さえ出せればどこにいてもいいんじゃないか」という考えを持っていました。

そこから行動に移す大きなきっかけになったのは、現在の代表からのたくさんの質問です。ヨーロッパから日本に着任して1ヶ月ぐらいの間に、多くの質問をもらいました。「日本人は何で遅くまで仕事をして帰らないのか」「帰ったと思ったらその時間から飲みに行っているが、いつ家族と過ごすのか」など、イタリア人の彼からすると日本人の働き方は非常に不思議なことばかりだったようなんです。でも彼が疑問に持つ点は、私も前からずっと違和感を持っていた部分だったので、彼がズバズバと指摘してくれて、「やっぱりそうだよな」と確信に変わりました。そこから代表を含む役員とディスカッションを重ね、4か月後には「WAA」をやることを社員に伝えました。

―4ヶ月というスピードで宣言できた背景はなんだったのでしょうか?

島田:利害関係の発生するようなものではなく、「社員のみんなにもっと生き生きと豊かに過ごしてほしい」という純粋な気持ちしかないことだったからだと思います。私は、良い意図でやることは絶対に成功すると信じていますし、「WAA」を実行することによるネガティブな要素は思いつきませんでした。だから、役員に話をしたとき、どこをつついても“社員にとって本当に良いこと”というシンプルな構造だったので、役員も腹落ちしてコミットメントできたことは非常に大きかったですね。成功の最大ポイントだったと思います。

―実施にあたり、懸念や反対意見はでなかったのでしょうか?

島田:たくさんでましたね。新しいことですからみんな不安だし、イメージがつきませんからね。したがってまずは100人ぐらい社員を選抜し、3か月間のパイロットを実施しました。もしそれで、全然駄目だったらやらないとなるだけの話です。でも、パイロット参加者の95%が「全社で取り組むべきだ」というポジティブな結果になりました。その中でも意見や改善点が色々と出てきたので、カテゴリー分けしてリスク対応を考え、法律的な側面での問題なども洗い出して、ひとつひとつ潰していきました。そして、「これなら大丈夫!じゃあ、やろう」と運用開始になったのです。

―全社で取り組む際に、何か特別に行ったことはありますか?

島田:パイロット後、社員には制度の説明会とともにマインドセットのトレーニングをしました。やはり、その使い方やどう活用していくかというマインドセットがないと、制度というものは無用の長物になってしまいます。制度とマインドセットの両輪があって、初めて進んでいける自転車のようなものだと思っています。

たとえば、「月間残業時間45時間」という目標を掲げたときに、「ブラック企業ですか」と言ってきた人がいました。「月に45時間までしか残業代を出さなくする」と解釈していたんです。もちろん、そういった類のものではなくて、「残業時間45時間以内を目標にしましょう」という意味なんだと伝えて、理解してもらいました。

ただ、この一例でもわかるように、本当に人は見たいものしか見ていないし、聞きたいことしか聞いていない。あと、「言った」と「伝わった」とは全く違うんだなと再確認しましたね。

新しい働き方が始まり、「毎日にポジティブな変化があった」という声が67%

―「WAA」の導入後、御社では取組みをどう評価していますか?

島田:実施してから10か月ほどですが、今までに4回アンケートをして、「ポジティブな変化があった」という回答が約7割あります。その他の結果からも現時点では「成功している」と言えると思います。もちろん全く問題がないわけではないですけど、大きな問題は一切なく、順調に進んでいます。

また、大阪大学の行動経済学の大竹文雄教授にご協力いただいて、行動経済学の視点から「WAA」はどんな効果があるのかを調べてもらっています。アンケートの実施にあたり、先生からのインプットもいただいて4回目のアンケートは質問を進化させていていますが、今回幸福度に関する質問が追加されました。結果は「幸福度が上がった」という人が33%、「下がっった」という人が10%、残りの約55%が「変わらない」です。生産性については平均3割アップという結果がでています。生産性をどう測るのかという議論はありますが、いろいろ考えた結果感覚値でいいと確信しています。自分の生産性が上がった、幸福度が上がったと思ったらそれでいいんです。

―ネガティブな意見は出ていないのですか?

島田:全くないわけではないです。「幸福度が下がった」という人もいましたが、働き方というよりも、仕事や個人の事情が要因でもあったので、必要なものに対しては人事として個別にフォローをしています。「WAA」を実施してから、第1回目のアンケートで、「困っていることがある」と回答した人は56%と半数以上。直近で実施した第4回目のアンケートでは46%まで下がっています。

社員が困っていると感じていることは、大きく分けて2点です。1つはコミュニケーションが取りづらくなったと感じていること、もう1つはシステムやテクノロジーへの不満ですね。1つ目の問題は、WAAをする人が増え、現在92%の人が利用していることで、ちょっと話したい時に同じ場所にいないことに対してコミュニケーションが難しくなったと感じているということです。2つ目のシステムやテクノロジーへの不満は、「スカイプが聞こえにくい」とか、「シェアドライブへのアクセスが遅い」とか、「電話がつながらない」などの意見がほとんどでした。

でも、これらすべては、会社で会ってコミュニケーションをとる時と比べたらという話になるので、ある意味当然のことだと思います。そこに対して「会社が投資して改善する点と、本人が気を付けるところと両軸でやっていこうね」というコミュニケーションを定期的にとっています。と同時に、じゃあ会社で会っているから本当に効果的なコミュニケーションが取れていますか?という問いかけもしています。すべては意識の持ち方だとも思っています。

地方再生や地方活性とも接続を

―「多様性のある働き方」という観点に置いて、今後どのような組織を目指していますか?

島田:「WAA」だけでなく、仕組みや制度という意味ではいくつもアイディアを持っています。定年もなくしたいですし、「WAA」を活用して地方や海外でも仕事ができるようにもっと広げたいと思っています。「2か月くらいハワイからリモートします」とか、そんな自由な例が増えていっても良いかなと。

でもその前に国内の働き方を変えたいので、まずは地方再生や地方活性というテーマと「WAA」をうまく結び付けられたらなと考えています。

会社は社員を心配しすぎ。もっと信頼をすべき

―今後、御社の取り組みを真似たいという経営者や人事の方に向けてメッセージをお願いします

島田:「WAA」実施前によく出た質問は「みんな会社に来なくなったらどうするんですか?」「社内のチームワークはどうやって取っていくのですか?」というものでした。でも正直、まだ起きていないことを先回りして心配するって時間とエネルギーの無駄なんですよね。だから「もしそうなったら一緒に考えましょう」と答えています。「とにかくやってみて、期待している結果と違っていたら直せばいい」と。いろいろ考えすぎないでやってみることで開けることもとても多いものです。

みんななんだか心配しすぎなんです。私たち会社も社員に対して心配しすぎで、心配するから制度を作って管理しようとする。心配じゃなくて信頼しましょう。任せる、絶対にちゃんとやります。

また、「働き方改革だとかダイバーシティだとか、今なんとなくそういう風潮だから検討しよう」とか、「上から言われたプロジェクトだからやらないといけない」という段階ではやっぱり物事は進まなくて、「本当に変えたい」というパッションこそすべてです。信念を持つ人がやると決めたら絶対にできるので、小さなところからやってみてください。ゼロをイチに変えられたら、ほぼ終わったのも同然です。本気かどうかがすごく大事だと思います。

 

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